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愛するあなた 恋するわたし―萩尾望都対談集 2000年代編

愛するあなた 恋するわたし

愛するあなた 恋するわたし

著者萩尾望都
出版社河出書房新社
刊行年月2014.5.30
頁数258p
定価1,500円
ISBN978-4-309-27494-3

目次

第1章吾妻ひでお「SF妄想世界の旅」『月刊COMICリュウ』2007年5月号p7~31
マンガ吾妻ひでお「バルバラ異聞」p32~33
マンガ萩尾望都「アズマヒデオとわたし」「ふたりと5人」3 1995.11.25p34
マンガ吾妻ひでお「萩尾さんのマンガが泣けるなぁ」p35
第2章よしながふみ「やおいと純愛」「このマンガを読め!」2006.12.31p37~84
第3章恩田 陸「萩尾作品は私の原点」『SF Japan』2006 AUTUMNp85~117
第4章庵野秀明+佐藤嗣麻子「エヴァンゲリオンのその後」『鳩よ!』No.189 2000.1.1p119~138
第5章大和和紀「少女マンガの黄金時代」「大和和紀DREAM」vol.1 2004.5.5p139~155
第6章清水玲子「マンガ的美少年」『MOE』2004年2月号p157~176
第7章ヤマザキマリ「始まりは萩尾マンガだった」語りおろしp177~247
あとがき「愛と恋と永遠と」 萩尾望都p248~249
2000年代編はさすがに初見はありませんでしたが、ボリューム感のある語りおろしが嬉しかったです。
吾妻ひでお
吾妻ひでお先生との対談は「バルバラ異界」が日本SF大賞を受賞されたときの徳間書店『コミックリュウ』の特集に載った対談です。「バルバラ異聞」はこのとき同時に載った2ページの吾妻先生の作品。

吾妻先生と萩尾先生は一つ違いで同じ年みたいなもの。お酒とSFが好きな古い友人どうしです。今は萩尾先生もお酒はずいぶん控えておられるし、吾妻先生はアルコール依存から立ち直った方なので、当然今は飲みませんが、SFのお話はとても盛り上がっているご様子ですね。

吾妻先生が宴会はアルコールハラスメントがあるからダメとおっしゃっていますが、アルコール中毒から立ち直ったと世界中に公言している人にアルハラって、出版業界はいったいどれほど非常識な人がいるんでしょうね、とこの対談を読んだときに思いました。アルコール依存症に対する認知度の低さは本当に目を覆うほどですね。
よしながふみ
年末恒例のマンガランキング本の1冊「このマンガを読め!」の2006年版に収録されたこの対談は、よしながふみさんの方の対談集にも収録されています。私はこの対談を最初に読んだとき、「大奥」で家光が猫を投げるシーンのコマの話を萩尾先生がされていて、「そう!ここ思わずハっと息をのんでしまって、うまいなーと思ってた!」と感激した記憶があります。

一番重要なのはやはりBL同人出身で商業作家として大成したよしながさんと、BLの祖とも言われる萩尾先生ですが、今のBLと「トーマの心臓」はもちろん違います。そこを突っ込んだ司会の方えらいです。萩尾先生は若かったから描けた純愛で、男同士である必然性はなく、女同士だと生々しいから、というのは繰り返しおっしゃってます。キンブルグ弁護士の言葉は私は大人になってからの方がかえって思い返すことが多いです。やはりああいう正論を吐く大人は少女マンガには出てこなかったから、新鮮でしたね。
恩田 陸
7~8歳ですでに手塚SFを読み込んで、萩尾先生の「精霊狩り」にやられたというSFエリートな作家・恩田さん。「ポーの一族」は年表がしびれる、と。うんうん。そうですよね。

この対談は「バルバラ異界」が終わり、「ここではないどこか」シリーズを始めた頃のものですので、必然的に「バルバラ異界」のお話になります。作品の製作過程をいろいろと語られているので、もし「バルバラ異界」を研究されている方がいらしたら、必読な対談だと思います。
庵野秀明、佐藤嗣麻子
この対談は庵野監督のオタク自認とオタク批判が炸裂していて、おもしろいですね。この対談で重要なのは、萩尾先生が「私は親が大人じゃないことがすごく不満なんです」とおっしゃるところです。佐藤監督も庵野監督も「親のこと(評価)は気にしない」と言い「親が喜ぶならと、地元の新聞の取材は断らない」とまで言います。それはもう世代の違いでもあるし、価値観の押しつけ具合が全然レベルが違うのだと思います。萩尾先生の場合は、相当強烈な否定され具合で、今なら「モラハラ=虐待」と言っても良いレベルではないかという気すらします。

それでもやっぱ萩尾先生の反発具合はすごくて、それはこの「親が大人じゃないことがすごく不満」というところがヒントなのかもしれないなと。親が大人でなければ、自分が大人にならなくては、と思ってしまうし、そういう考え方をせざるを得ない(それでACになってしまうのですが)。そこを萩尾先生は絶対に「親が大人になるべきだ」と頑固に思い続けて、自分の方が大人になることを拒絶する。だからこそ、あれらの強烈な作品群が生み出せたのだろうなと思うわけです。
大和和紀
大和和紀さんは萩尾先生の一つ上ですが、デビューは1966年と3年早く、当時の早熟な少女マンガ家さんたちの一人として認知されていました(里中満智子さんも1948年生まれで1964年デビュー)。長い間一緒に走ってこられた盟友ですが、大和さんは41歳のときに結婚、45歳で出産という体験をされています。この年代の少女マンガ家としては珍しいかなと思います。「子供がまだ小さいので海外は…」とおっしゃっていますが、この対談が2004年です。1994年でご出産されているので、お子さんは9~10歳。小さいという年齢ではありませんが、母親が海外に何日も何週間も行ってるという状況に抵抗を感じる、一般的な感覚をおもちの方なんだなと思いました。行き先がアフリカですからね。でも作品にお子さんがいることが反映されている時期でした。

同年代だけあって、共通しているのが若い頃の無茶な仕事ぶり。萩尾先生が目を痛めたときに休むように言って下さった、ささやななえこ先生に感謝です。
清水玲子
この対談は『月刊MOE』の「少女マンガ VS 少年マンガ 人気美少年 対決!! 大図鑑」という特集号に掲載されたもので、清水玲子さんは白泉社の看板作家でした。この対談、初出掲載時は途中からスタジオライフの俳優さん達が入ってきていましたね。
萩尾先生の「美少年のくせに幸せになろうなんて甘い」は名言ですね。
ヤマザキマリ
これは今回の対談集の語りおろしです。萩尾先生とヤマザキマリさんとの出会いは、2012年3月16日~19日にパリで開かれた国際ブックフェアで、この時は対談をされています。ヤマザキマリさんが萩尾先生の作品に出会ったのは、子供の頃、海外への憧れからだったと。萩尾先生の作品は海外が舞台になったものが多いですから、その辺も私と一緒です。マリさんがおっしゃる通り、最近の若い方は海外への憧れだ少ない。私はヤマザキマリさんとほぼ同世代なので、ちょっと頑張る系の人は「海外に行くのは当たり前」でした。

萩尾作品の中でもヤマザキマリさんが好きなのは「ケーキケーキケーキ」だという話は1月の画力対決でも出ていました。らしいなと思ったものです。私はお二人ともファンなので、お二人がお話されているのを読んでいるだけで、ワクワクします。楽しそうですね。

私も三重に行きたいです。

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