作品目録

ぼくの地下室へおいで

Bradbury傑作選

原作
レイ・ブラッドベリ Come into My Cellar
初出誌
「週刊マーガレット」1978年第18号(1978年4月23日号) p129~159(30p)(※扉裏広告)
登場人物
マニー・フォートナム:17歳の女の子
トム・フォートナム/ヒュー・フォートナム:マニーの双子の弟
ロジャー・ウイリス:マニーのボーイフレンドで大学生。
グッドボディ:マニーの隣のおばあちゃん。害虫駆除に注力している。
ウイリス:ロジャーの父親
ジョー・ウイリス:ロジャーの弟
フォートナム:マニーの父親
シンシア:マニーの叔母。マニーたちの世話をしている。
あらすじ
マニーの家に航空便でニューオーリンズから小包が届く。双子の弟が雑誌の広告に載っていたきのこを買ったのだ。二人は地下室できのこを育てるのに夢中になる。
一方、マニーの小学校時代からのボーイフレンド、ロジャーの様子がおかしい。「何かわからないが、異変が起こっている」とおびえている。そのロジャーが家出をしたとロジャーの父親から連絡が入る。ロジャーの部屋からロジャーの荷物がなくなっている。
マニーの家にロジャーから電報が入る。「ニューオーリンズに行く。速達小包絶対受け取るな」という内容だった。するとその直後、ロジャーから電話が入り、南部の大学に旅行に行っている、両親にも言ったはずだと言う。
マニーはおかしいと思い、ロジャーの家に電話をする。すると3日前、きのこの入った速達小包がロジャーのところにも届いたと言う。やはりロジャーもきのこを育てていたのだが……
コメント
ブラッドベリ傑作選シリーズの中で一番怖い話です。人々が気づかぬ間に宇宙人に侵略されていくというストーリーで、宇宙から円盤がせめて来てレーザーで攻撃する、などという大規模なジュール・ヴェルヌの世界に対して、こちらの方がよほど怖い。目に見えない最近や胞子が人間の体内に入り、徐々に人間を浸食していくのですから。
都会は害虫駆除や芝生の手入れをしている人が多いから難しいが、湿った南部の入り江だったら育つのではないか、というところはアメリカらしいと思いました。私も整然としたアメリカの中流階級の町並みを見ていて、ふと不思議な気がしました。なんでこんなにきれいなのか、と。ひょっとしてブラッドベリも熱心に害虫駆除や芝生の手入れをしている人々を見て、これは侵略戦争なのだ、などと思ったのかもしれません。
「マラスミウス オレアデス」は日本名は「シバフタケ」と言います。学名が「Marasmius oreades」で、ふつうは英語でも“Scotch bonnet”や“fairy ring mushroom”と呼ばれ、そんな名前では呼ばれないようです。学名がなんだかよくわからない感を醸し出していますね。
補足ですが、原作とはだいぶ登場人物が違います。マニー・フォートナムという少女は存在せず、父親のフォートナム(ヒュー・フォートナム)が主人公です。ロジャー・ウイリスは彼の友人で生物学の教師です。トムは双子ではなく一人息子で、シンシアは叔母ではなく妻です。ジョーはロジャーの弟ではなく息子になります。中年男が二人で悩んでいるより、少女と少年の方が少女漫画向けですから、そのように変更を加えたのだと思われます。

2010.6.17

収録書籍
ウは宇宙船のウ―ブラッドベリSF傑作選

ウは宇宙船のウ―ブラッドベリSF傑作選(集英社漫画文庫) 1978.12

萩尾望都作品集・第二期 第6巻 ウは宇宙船のウ

萩尾望都作品集・第2期 6 ウは宇宙船のウ 小学館 1985.12

ウは宇宙船のウ (小学館文庫・新版)

ウは宇宙船のウ 小学館文庫・新版 1997.9.1

きのこ漫画名作選 Pヴァイン 2016.3.30 p233~261

入手しやすい本作品収録の単行本 ウは宇宙船のウ (小学館文庫・新版)

ウは宇宙船のウ (小学館文庫・新版)  小学館 1997.9.1

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ウは宇宙船のウ

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