作品目録

ゴールデンライラック

 

初出誌
「別冊少女コミック」1978年3月号~5月号 
前編:1978年3月号(1978.3.1) p11~60(50p)
中編:1978年4月号(1978.4.1) p85~134(50p)
後編:1978年5月号(1978.5.1) p85~134(50p)
登場人物
ヴィクトーリア(ヴィー)
ビリー・バン:ヴィクトーリアの従兄弟。
スタンレィ氏:ヴィクトーリアの父親。銀行家。
スタンレィ夫人:ヴィクトーリアの母親。
スティーブンス男爵:ヴィクトーリアに近づく男性。
コニー:ヴィクトーリアの娘。
あらすじ
ビリー・バンは8歳。幼い頃両親に死なれ祖父に育てられていた。その祖父も亡くなり、 親戚にたらい回しにあった後、父親の義理の兄の家に引き取られる。彼は銀行家で裕福で、ヴィクトーリアという娘が一人いた。ヴィクトーリアはビリーと同じ年で、3歳のときに会ったビリーのことを覚えていた。初めてレディーとして扱ってもらって、嬉しかったからだ。
ビリーは翌日からヴィーと一緒に学校に通う。早速級友から「居候でみなしご」といじめられると、ヴィーが全力で戦ってくれた。親戚中でやっかいもの扱いされてきたビリーは、ようやく安心できる場所を見つけた。
ビリーはすぐに級友たちとも仲良くなり、ともだちも出来た。ある日、飛行機が飛ぶのを見た。そしてサーカスがやってきてビリーとヴィーは気球に乗って、初めて空を飛ぶ。1909年ルイ・プレリオがドーバーを飛行機で超えた。そんな時代だった……
コメント
第一次大戦前後のイギリスを舞台に、歴史に翻弄される女性がたくましく生きていく姿を描いた作品です。キーワードは「飛行機」そして「ライラック」です。非常にわかりやすく、美しい作品に仕上がっているのですが、それでいて、これまでの少女漫画誌にはなかった大人の物語になっています。
ヴィーはもともと気の強い女の子で、一家が困窮すると自分で稼がねばと考え、必死に働くのですが、貧しさから抜け出せず、ビリーに心を残したまま結婚します。ビリーの死でそのことを後悔しますが、優しい夫のおかげで幸せになることが出来ました。
スティーブンスの人間が出来ているからこそ、この物語は成り立っているのですが、彼が自分のずるさも認めているあたりが良いです。この物語が単なる幼なじみの悲恋に終わらずに済んだのはスティーブンスのおかげです。「いいんだ、わたしの方は一番愛していたんだから」なんて台詞は単純な少女漫画にはなかったものでしょう。「一番好きな人と幸せになる」以外の結末は認められなかった時代もあったのでしょうから。
萩尾先生の作品に「女の一生もの」と言える作品がいくつかあります。この作品は1897~1927頃のもので、せいぜい3歳~30歳くらいの間なので一生では全然ないのですが、その最初の作品かなと思いました。

2010.6.15

収録書籍
ゴールデンライラック(プチフラワーコミックス391)

ゴールデンライラック プチフラワーコミックス 小学館 1982.7

萩尾望都作品集・第二期 第5巻 ばらの花びん

萩尾望都作品集・第2期 5 ばらの花びん 小学館 1985.10

ゴールデンライラック

ゴールデンライラック 小学館文庫(新版) 1996.5

愛の宝石

Flower Comics Masterpieces 
愛の宝石 小学館 2012.12

入手しやすい本作品収録の単行本 ゴールデンライラック

ゴールデンライラック 小学館文庫(新版) 1996.5

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