作品目録

あぶない未来少年

あぶない丘の家シリーズ

初出誌
「ファンタジーDX」1994年6~10月号(1994.6.1~10.1) 170p
#7(第1話):1994年6月号(1994.6.1) p567~608 (扉裏広告)
#8(第2話):1994年7月号(1994.7.1)
#9(第3話):1994年8月号(1994.8.1)
#10(第4話):1994年9月号(1994.9.1)
#11(最終話):1994年10月号(1994.10.1) p513~546(扉裏広告)
登場人物
平羅坂真比古(ヒラサカ・マヒコ):高校2年生。
平羅坂安曇(ヒラサカ・アズミ):予備校生。マヒコの兄だが、本当は宇宙人。
不動律子(リーコ):マヒコのクラスメートで坂の下の古道具屋の娘。
ユカ:リーコの姪。
ジーン・トニオ:ハワイから来た日系3世の少年。
内海トロヤ:カリフォルニアの研究所にいる天文学者。
内海遊羽(ユウ):トロヤの双子の息子。15歳。
内海美衣(ミイ):トロヤの双子の娘。
内海父:進学塾の講師をしている。
クワバラ:マヒコのクラスメート。
モノン:ジーンを追いかけるロボット。
あらすじ
遊園地の宇宙物アトラクションでアズミが宇宙人のアルバイトをしているというので、マヒコはリーコとリーコの姪のユカの3人で遊びに行く。宇宙旅行をしているようなアトラクションに乗っていると、突然自転車に乗った宇宙人が現れ、ぶつかりそうになるがホログラムのように消えてしまう。
その晩、アズミとマヒコが缶ゴミを出しに行くと、神社の崖から自転車に乗った赤毛の少年が落ちて来る。彼は英語を普通に喋っているが、その自転車にマヒコは見覚えがあった。昼間見た宇宙人の自転車だ。アズミは放ってもおけないと少年を家に連れて帰る。彼は英語しか話せないようだ。
テレビではシューメーカー・レビーという彗星が7月半ばに木星に衝突する話をやっている。それを見た少年が「ネメシス」とつぶやき、日付を確認すると泣き出してしまう。アズミが聞き出したところでは、彼の名前はジーン。ハワイから来たばかりで叔母のトロヤさんを探しているとのこと。翌朝ジーンは自転車とともにいなくなっており、大量の紙がパソコンからプリントアウトされていた。
マヒコの高校にユウとミイの内海兄妹というハーフの双子が進学してきた。兄のユウの乗っている自転車がジーンのものにそっくりだったので、マヒコが問いただすと、トロヤの息子と娘であることがわかる。トロヤは今カリフォルニアのフォクシーズ天体研究所で彗星を探す仕事をしているという。トロヤとユウとミイ父親はハワイの大学で知り合って結婚し、トロヤはその後二人を産んだのたが、どうしても研究を続けたいというので、彼女はカリフォルニアに行き、別々に暮らしている。
ある日、マヒコのクラスにジーンが転入生としてやって来る。礼儀知らずとマヒコはジーンに怒るが、ジーンはまるで悪びれない。トロヤはジーンにとって叔母にあたるが、お互いにいとこがいることは知らされていなかったようだ。ジーンはユウとミイにネメシス(地球に彗星雨をふらせ恐竜を絶滅させたという幻の伴星)が来ると言う。
そのカタストロフは1994年の隕石から始まり、2024年まで30年続く。ジーンは秘密の図書館で見たという。実はジーンは未来からやってきた。2178年生まれだ。トロヤも実は未来人で、ジーンより1年早く出発したが、到着した時間に17年も差がついてしまったという。マヒコやユウはジーンの話を簡単には信じられない。
ミイがジーンが来たことをトロヤに知らせると、すぐに帰るという。ところが、モノンというロボットがやってきてジーンを追いかけ回すようになる。ジーンはつかまると連れ戻されるというので、ミイの提案で長野の別荘に逃げることにする。
トロヤも戻ってきて長野の別荘でジーンと再会する。カタストロフは果たして避けられるのか…?
コメント
「カタストロフ」をテーマにしたSF作品ですが、これまでのコメディのムードはほとんどなくなり、シリアスな作品となっています。それは終末を集まっているのですから、当然そうならざるを得ないのですが、ちょっとしたロマンスのおかげで物語をいい雰囲気で終わらせてくれています。
「生き残った一人の人間のために作られた世界」もSFらしいテーマだろうと思います。私がSFに詳しくないのでわかりませんが、どこかにありそうな気がします。
最後になってようやく「あぶない丘の家」の舞台が横浜とわかりました。鎌倉の鶴岡八幡宮まで電車で気軽に行ける距離で、モノンが「横浜から直線距離で…」とか、トロヤが「横浜の家に…」と言っています。横浜から中央線の乗り方は東海道線・山手線で新宿まで行き、始発で乗る経路と東神奈川から八王子へ行ってそこから乗る経路とあります。横浜には結構高い丘にある住宅地もありますから、雰囲気的には合っている気がします。
この作品で「あぶない丘の家」シリーズは終わりですが、一話完結だったため、特に終わりらしい感じはしません。アズ兄ちゃんの正体もわからないままです。この後2001年夏までは散発的に短篇を発表されるだけで、「残酷な神が支配する」に集中されています。

2010.8.17

収録書籍
あぶない丘の家 第3巻

あぶない丘の家 3 ASUKA COMICS 角川書店 1994.12

あぶない丘の家

あぶない丘の家 小学館文庫 2001.12.10

入手しやすい本作品収録の単行本 あぶない丘の家

あぶない丘の家 小学館文庫 2001.12.10

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