作品目録

由良の門を(ネオ寄生獣 No.12)

 

初出誌
「アフタヌーン」2016年5月号 (2016.5.1) p9~68(60p)
登場人物
神田由良:パラサイト・田宮良子(後に玲子)の娘。
由井:捕獲されたパラサイト島田秀雄の死体を解剖・分析した医師。ずっと由良を診察し、パラサイトかどうかを観察している。
神田夫妻:由井の親戚。由良を引き取って育てる。
石川充:由良の小学校にきた転校生。
石川愛:充の叔母。充の母親の妹。
美浦一生:充の兄。
美浦正史:充の父親。
美浦順子:充の母親。一生に殺された。
泉 新一:「寄生獣」の主人公。絶命直前の田宮良子から由良を託された。
あらすじ
田宮良子(玲子)が新一に預けた娘はその後「由良」と名付けられ、由井医師のもと、病院で経過観察をしながら育てられていた。三年後、里親になってくれた神田夫妻に引き取られ、銚子で暮らす。一見、普通の子どもに見えるが、頭の中で声が聞こえる。「ダマレ、コロセ」と。
更に六年後、名古屋の病院で再度由井は由良を診察。そのとき、由良という名は由井医師がつけたものと知る。由良は母親が自分に名前もつけずに死んだことから、母親が眠ったまま自分を産んで死んだのではないかと考え、頭の中に響く「ダマレ」「コロセ」という声が母親のものかもしれないと思う。 
病院から奈良の神社へ行った由良は、そこで能と出会う。「海人」という演目の「玉の段」というシーンに自分の母を投影するが…。
コメント
私は、時折連載を読んでたものの、頭から最後まで「寄生獣」を読んだことがありません。だいたいの設定だけしか知りませんでしたが、それでも充分にわかります。おそらくまったく読んだことのない方でもわかると思います。作品として完成度が高いからです。
作品名は「由良の門を 渡る舟人 かぢを絶え ゆくへも知らぬ 恋の道かな」という古今和歌集の曽禰好忠の歌からとられています。「海人」という能のクライマックスシーン「玉の段」が重要なモチーフになっています。「バルバラ異界」のときにもキリヤが神楽を踊っていました。萩尾先生の作品にこういった日本の古典芸能が登場するようになったのは、比較的最近のことです。
舞台となった銚子は「AWAY」にも登場しましたが、2014年11月に犬吠埼に行かれたことが影響しているのでしょうか?何度も訪れていらっしゃるのでしょうか?
この作品は見事なまでに「母さがし」の物語になっていて、感動します。パラサイトの田宮良子が赤ん坊を守り、新一に託したシーンを、海女が龍に追われて乳房の下を切って宝珠を押し込んで隠したシーンに結びつけるなんて、言葉になりませんでした。
○ネオ寄生獣シリーズ
No.1平本アキラ「アゴなしゲンとオレは寄生獣」2014年11月号
No.2瀧波ユカリ「寄生!! 江古田ちゃん」2014年12月号
No.3韮沢靖「PARAGANT」2015年1月号
No.4遠藤浩輝「EDIBLE」2015年2月号
No.5植芝理一「ミギーの旅」2015年月4号
No.6皆川亮二「パーフェクト・ソルジャー」2015年5月号
No.7熊倉隆敏「変わりもの」2015年6月号
No.8PEACH-PIT「教えて!田宮良子先生」2015年7月号
No.9真島ヒロ「ルーシィとミギー」2015年10月号
No.10太田モアレ「今夜もEat it」2016年4月号
No.11竹谷隆之「ババ後悔す」2016年5月号
No.12萩尾望都「由良の門を」2016年5月号

2016.3.25

収録書籍
ネオ寄生獣

ネオ寄生獣 講談社 2016.7.22
(p3~62)

入手しやすい本作品収録の単行本 ネオ寄生獣

ネオ寄生獣 講談社 2016.7.22

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参考情報
翻訳:英語
Neo Parasyte M

うろうそ