作品目録

春の夢

ポーの一族シリーズ

初出誌
vol.1「flowers」2016年7月号(2016.7.1) p5~44(40p)
vol.2「flowers」2017年3月号(2017.3.1) p3~36(34p)
vol.3「flowers」2017年4月号(2017.4.1) p51~80(30p)
登場人物
エドガー
アラン
ブランカ:ユダヤ人の少女。16歳。ハンブルクからやってきた。
ノア:ブランカの弟。10歳くらいか?
ファルカ:吸血鬼仲間だが、エドガーとは家系が違う。赤ルーシ出身のヴァンピール。800年ほど生きている。
クロエ:ポーの村からきた婦人。

ダン・オットマー:ブランカのおじ。リヴァプールで商売をしていたが、身体を壊して祖父の別荘のあるアングルシー島へ療養に。
マージ:ブランカの従姉妹
ベス:ダン・オットマーの妹。ブランカのおば。
ザブリナ:ダン・オットマーの妻。ドイツ人。ドーバーで看護婦として働いている。
ヨハンナ:サブリナの妹。ドイツ人。ブランカとノアの母親。チェロ奏者。
ブランカの父:ハンブルクで楽器の制作と修理をする工房を営んでいた。
ダン・オットマーの母:リヴァプールに住んでいる。
マクシー・オットマー:ダン・オットマーの父。存命?
あらすじ
1944年、第二次世界大戦の中、エドガーとアランはロンドンで被災したため、ウェールズ地方のアングルシー島に避難してきた。そこでエドガーは「はぐれてしまった小鳥のような心細い目をした」少女に出会う。彼女の名はブランカ。弟のノアとともに、近くに住むダン・オットマーのところで世話になっている。
ブランカの一家はハンブルグに住んでいたが、「水晶の夜」の時に襲撃されてしまう。水晶の夜は1938年11月9日夜から10日未明にかけてドイツ各地で発生した反ユダヤ暴動で、ブランカ一家はオランダのハーグに避難した。オランダはドイツに近く危険だが、ブランカの父母は遠くへは離れられない。子供たちだけでもとブランカとノアを送り出し、二人はフランスを経由してイギリスに嫁いだ伯母(ザブリナ)のもとにやってきた。
幸い、ザブリナの夫のダン・オットマーは裕福で親切な男で、ザブリナは看護士として徴兵されたため今はいないが、従姉妹のマージやダンの妹のベスらに囲まれ、一見落ち着いた暮らしをしている。だが、両親と連絡がとれず、不安な日々の中で、ブランカはエドガーに出会った…。
コメント
「ポーの一族」の連載が40年ぶりに再開されました。これだけ時間が経った今、何故萩尾先生がエドガーとアランの物語を続けようと思ったのか、それを考えていかなくてはなりません。
まだ連載第1回目なのでわかりませんが、テーマはおそらく「戦争」、そして「戦争」がもたらすもの、だと予想しています。
ブランカはユダヤ人であるが故にドイツで迫害されました。でもドイツ語を話すことでドイツ人と思われ、イギリス人に敵だと思われたくなくて必死です。5年も父と母と離ればなれになり、今は二人の行方もわからない。少し困った弟を守らなければならない。やっかいになっている叔父に迷惑はかけられない。そういったプレッシャーに押しつぶされそうになっていたブランカを解き放ったのがシューベルトの「春の夢」。「こんな世界、大っきらい!」と叫ぶブランカの言葉…。
ダン・オットマーの病気は何か。マージの子供は何故死んだのか?信心深いのは何故か?運転手のブランカへの密やかな執着。病気の夫をおいてもザブリナがドーバーに行かなくてはならない理由は何か?たくさんの伏線や疑問がちりばめられています。
ブランカの弟のノアのことが気になります。一度聞いた歌はすぐに覚える記憶力。子供を亡くしているマージに「マージの子供はいつ遊びに来るの?」という空気読めなさ。「ノアはちょっと変わった子だけど、みんなにかわいがられてた」というブランカの言葉。自閉症スペクトラムの子ですね。「残酷な神が支配する」のエリックがそうでしたが、こういう「ちょっと普通の人たちのルールを逸脱した」キャラクターが物語を思わぬ方向に動かしていくことを知っていて、登場させているのではないかと私は勝手に想像しています。

2016.5.29

由良の門を