作品目録

ハルカと彼方

ゲバラ・シリーズ

原作
田中アコ
初出誌
「月刊アフタヌーン」2010年3月号~4月号
前編:2010年3月号(2010.3.1) 51p
後編:2010年4月号(2010.4.1) 49p
登場人物
高野白湯子(たかの・さゆこ): 
ゲバラ:化猫
鳴海彼方:白湯の小学校のときの同級生
鳴海羽流化(ハルカ):彼方の兄
あらすじ
羽流化と彼方の兄妹は羽流化が高校生、彼方が小学校4年生のときに両親を交通事故で亡くした。彼方はショックで言葉が出なくなり、羽流化はそんな妹の面倒を見ながら学校に通い、社会人になって妹を大学まで出した。今では羽流化の方がひきこもりの変人で、彼方は美しい女性に成長し、大学を卒業して研修中である。
高野白湯子は子供の頃から人に見えないものが見える性質で、ほかの人には人間にしか見えない化け猫・ゲバラのことも、ちゃんと猫に見える。白湯の会社の同僚・菱川さんが亡くなってからゲバラには会えなくなってしまった。
白湯が寝過ごして海岸の近くでバスを降りると、そこに彼方がいた。小学校の同級生だった二人が久しぶりに再会し、近くにある彼方の自宅に二人は向かう。そこには羽流化の飼っている熱帯魚がたくさんいた。羽流化は病気で息をするのもつらそうで、仕事もやめて家にいた。病院に行っても不調の原因がわからず、彼方が心配していた。
彼方の家に猫が入り込んできた。追い払われたが、白黒の猫で、ゲバラではないかと白湯は思う。直後、白湯は人間になった姿でゲバラと再会する。ノラなのでおなかがすいているというゲバラを、白湯は自宅に連れて行って食事をさせる。そんなことからゲバラのすみかもわかり、白湯と彼方のメール交換も始まる。
彼方から再び猫が入り込んできたとの連絡を受け、白湯はゲバラに会いに行く。ゲバラが言うには、「あの家からすごくうまそうな匂いがする」とのことだが、その匂いは何なのか。また羽流化の症状はいっそう悪くなっていくが…
コメント
「菱川さんと猫」(田中アコさん原作)というゲバラシリーズの続編です。ファンタスティックですが、ネコを擬人化させた物語ということで、ユーモラスな面もある作品になっています。ゲバラはちゃんと猫なのですが、化け猫ということで、白湯子以外には人間にしか見えない、その流れを上手に生かした「魚の化け」というのが面白い着眼点でした。
舞台は北国の地方都市です。前回は「ゆきの町文学賞」受賞作ということで雪がたくさんある風景でしたが、今回は春先からの風景で、海がメインになります。この海はなんとなく日本海側のようなのんびりとした雰囲気です。
最初、兄の羽流化がしっかりとした兄という感じで登場し、妹の彼方はとても繊細な少女でした。後にこの関係が逆転し、彼方の方が美少女に成長しており、しっかりしてきているのに対し、羽流化がニートで引きこもりといった感じになっています。最終的に二人の関係は元から変わっていなかったことがわかるのですが、小説で読んだらどうなのかなという点に少し気をつけて読んでいると、この辺が漫画表現の良さだなと感じた次第です。
今回、白湯子の家庭が登場します。これがにぎやかで良い家庭で、羽流化と彼方の二人きりの家庭の寂しさが際立ちます。また、日本の海が舞台というところで、ちょっと「海のアリア」を思い出しました。あれは太平洋でしたから本当は全然違う色なんですが、萩尾先生の描く海が美しくて、印象的です。

2010.2.26

収録書籍
菱川さんと猫

菱川さんと猫 アフタヌーンコミックス 講談社 2010.9.22

入手しやすい本作品収録の単行本 菱川さんと猫

菱川さんと猫(アフタヌーンコミックス) 講談社 2010.9.22

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