2012年8月

Flower Comics Masterpiecesシリーズの萩尾望都先生は「愛の宝石」

愛の宝石2012年12月7日、Flower Comics Masterpieces(フラワーコミックスマスターピーシーズ)という短編アンソロジーが刊行されます。豪華別冊つき、全巻ハードカバー、化粧箱入りです。2,730円。

萩尾望都先生は「愛の宝石」というタイトルでこのシリーズから1冊刊行されます。詳細はこちら。

初期のラブコメから、時空を越えた愛の物語まで、萩尾望都が描く『恋』の物語をぎゅっと集めた短篇集。

収録作品は以下の通り。

「ママレードちゃん」
「妖精の子もり」
「秋の旅」
「6月の声」
「オーマイ ケ セイラ セラ」
「ゴールデンライラック」
「きみは美しい瞳」
「ジュリエットの恋人」

萩尾望都が手がけた短編の中から、恋愛を描いた珠玉作を集めたアンソロジー。ゴールデンライラックは雑誌掲載時と同じくカラー原稿も再現して収録。加えて幻のエッセイコミック「まんがABC『ゴールデンライラックができるまで』」を単行本初収録。

「まんがABC」は1974年に24ページのものがあり、その後、1977年1月号~1979年3月に毎回1ページずつ、全27回にわたり掲載されたものがあり、ファンから一冊にまとめて欲しいとの声の高かったものです。この「ゴールデンライラックができるまで」は「まんがABC」の第13回~第17回(1978年1月号~5月号)の5回に渡って連載された「一つの話ができるまで」が該当すると思われます。

別冊は"モーさま世界を行く!"と題し、

イギリスからフランス、スペイン、イタリア、台湾などを旅した若い日の珍道中から最近の未発表レポまで、トラベルエッセイコミックを一挙収録。
とあります。先生のコミックエッセイは「萩尾望都作品集」等に収録されているものもありますが、初単行本のものもあるのではないでしょうか?

イギリス:ハローイングランド(「萩尾望都作品集 第10巻 キャベツ畑の遺産相続人」に収録)
フランス:パリ便り(「萩尾望都作品集・第二期 第9巻 半神」に収録)/ヨーロッパ便り(「萩尾望都作品集 第15巻 この娘うります」に収録)/ドリーム・イン・パリ(単行本未収録)
スペイン:ヨーロッパ便り~スペイン~(萩尾望都作品集 第4巻 セーラヒルの聖夜」に収録)
イタリア:ふしぎなパレルモ(未収録)
台湾:台湾故宮博物院のススメ(未収録)

ここにあげたのは先生の旅ものエッセイの一部です。根こそぎ集めて一冊にまとめて欲しいのですが、どのくらい収録されるんでしょうか?ガラパゴスとかもあるんですよね...。楽しみです。(→イラストエッセイ

【購入方法】
予約期間は9月1日(土)~11月20日(火)。こちらのサイト(Flower Comics Masterpieces)から買えますが、ちょっとわかりずらいので説明します。尚、サイトには書いてありませんが、事前予約すると、予約特典として先生からスペシャルメッセージカードが届くそうです。

1) 予約申込み:
リアル書店:書店予約申込み用紙(PDF)をダウンロードして印刷、記入して本屋さんにもっていって下さい。

ネット書店:BOOK SHOP小学館+、amazon、楽天、7net shoppingsで予約できるようですが、どうやって予約購入するのかは、BOOK SHOP小学館+以外はその書店にお任せのようです。(こちらのページの一番下にネット書店へのリンクがあります

2) サイト上から予約特典を申し込む。
予約特典申込みページ

3) 発売後、リアル書店の場合は申し込んだ書店から連絡があるので、書店まで行って購入して下さい。その後、小学館より予約特典が郵送されてきます。

ネット書店の場合は購入したネット書店より本が郵送され、予約特典は小学館より郵送だと思います。BOOK SHOP小学館+の場合が同様かはわかりません(一緒に送られてくるのかもしれません)。

アマゾンで購入する

この「マスターピーシーズシリーズ」のラインナップは以下の通り。

萩尾望都「愛の宝石」(→小学館COMICS
吉田秋生「夜明け」
渡辺妙子「想い/絆」
篠原千絵「いつか見た空」
田村由美「生命の熱量」

楽しみな一冊です。

追記【2012年12月29日】
予約特典のメッセージカードが届きました。クリスマスまでに届ける予定だったようで、「Merry Chirstmas」のカードになっています。絵柄はレオくんです。小学館から郵送でした。

2012.08.28 9:00 | 単行本発売情報

『flowers』10月号に「紫綬褒章お祝いの会潜入ミニレポート」が掲載。

flowers 2012年10月号2012年8月28日発売の『flowers』2012年10月号に「レオくんの萩尾望都先生紫綬褒章お祝いの会潜入ミニレポ」が掲載されています。7月30日に都内で開かれた紫綬褒章のお祝いの会の様子が掲載されています。波津彬子先生、小玉ユキ先生、明石路代先生、さいとうちほ先生、篠原千絵先生、西炯子先生、水城せとな先生、ヒガアロハ先生、名香智子先生、諏訪緑先生、清原なつの先生ら漫画家の先生方や編集者の方がたくさんかけつけられたそうです。

萩尾望都先生「紫綬褒章受章お祝いの会」開かれる!!

また9月28日頃発売の11月号に「ジャパン・エキスポ イン パリ」というエッセイコミックが掲載される予定です。

ヨーロッパ最大のまんがイベントで、萩尾先生が自らネコのレオくんの同人誌を販売。その顛末をまんがでレポート。プレゼントも!

このプレゼントは何でしょうね。販売されたグッズの中からピックアップされるのでしょうか。ジャパンエキスポのグッズ一覧

flowers次号予告

2012.08.28 1:41 | 雑誌掲載情報, 受賞

9月15日 小学館文庫「ルルとミミ」刊行

ルルとミミ2012年9月15日に小学館文庫から「ルルとミミ」が発売されます。収録作品は以下の通りです。

「ルルとミミ」
「すてきな魔法」
「クールキャット」
「爆発会社」
「ポーチで少女が小犬と」
「モードリン」
「かたっぽのふるぐつ」
「花嫁をひろった男」
「小夜の縫うゆかた」
「ケネスおじさんとふたご」
「ごめんあそばせ!」
「毛糸玉にじゃれないで」
エッセイ:山岸凉子

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ほとんどが絶版で読むことができない作品ばかりです。ありがたいことです。この中で特に最近の萩尾先生のファンにオススメしたいのは「小夜の縫うゆかた」でしょうか。この短い中にこれだけの時間の行き来が繰り広げられた、しかも和の風情、抒情あふれるすごい作品です。高橋留美子先生が初めて萩尾作品に触れた作品だと言われていました。
「花嫁をひろった男」は初期オスカーが登場。「かたっぽのふるぐつ」は「なのはな」以前では唯一の社会派と言える作品で当時問題となっていた公害を扱っています。ほか「毛糸玉にじゃれないで」など、当時は日本を舞台にした作品も描かれていたことがわかります。

そして「ポーチで少女が小犬と」で『COM』にこの新人が登場したときの衝撃を感じて下さい。

解説は山岸凉子先生です。

「ルルとミミ」

小学館 368p 690円 ISBN9-784-09-191350-0

「萩尾ワールド」の原点がここに!!
仲良し双子ルルとミミがコンクール入賞を目指してケーキ作りに挑戦するけれど、それが大騒動の始まりに...!?
貴重なデビュー作である表題作を始め、キュートなコメディーから先鋭的SF、サスペンス、そして現代日本を舞台にした日常ドラマまで、どの作品も見逃せない、萩尾世界の「生誕期」を堪能して下さい。
2012.08.25 23:10 | 単行本発売情報

女子美術大学公開講座「宇宙・人間・アート」に萩尾先生が登壇

女子美術大学 アート・デザイン表現学科 特別公開講座「宇宙・人間・アート」に同大学客員教授である萩尾望都先生が登場され、「萩尾望都 SF漫画の世界」というタイトルで公開授業を行います。

          記
日時:2012年9月10日(月)16:20~17:50
場所:女子美術大学杉並校舎 7号館7201教室(交通案内
入場:無料
定員:50名
申込み方法:事前申込は不要。当日正門受付で手続きを行う。会場に入れなかった場合はサテライト会場での聴講可能。

平日です......。

しかも、並ぶよりほかないと。どのくらいから並んだらよいのかわからないですが、1時間くらいでしょうかね...。朝から並んだら学校にご迷惑でしょうし。サテライト会場へ行くのを覚悟して、ガツガツせずに行けば、良いのではないでしょうか。

SF作品をまた描いて下さらないかなと思っているSFファンはちょっと外せないテーマですね。

女子美術大学 アート・デザイン表現学科 特別公開講座(女子美術大学)

杉並区イベント情報

【8月24日追記】
萩尾望都先生公開授業(9/10)の受講方法について
メールでの事前申込みになったようです。問い合わせが殺到したんでしょうね。


【9月3日追記】
女子美からメールが来ました。メール申込み数は定員はオーバーしているものの、増員やサテライト教室でなんとかなる人数だったようで、メール申込みした人は全員入ることが出来るそうです。よかったー。

2012.08.21 10:41 | イベント

カタログハウスの小室等さんとのトークショー・レポート

小室等さんが「カタログハウスの学校」でやっている「小室等の聞きたい聴かせたい」というセミナーに萩尾先生が呼ばれた形でのトークショー。カタログハウスと萩尾先生のつきあいのきっかけはこちら
場所は新宿カタログハウス本社地下1Fの150名ほどのセミナールームでした。
小室等さんが司会進行をされ、歌も歌い、休憩を挟んでたっぷり2時間の催しものでした。ギターとテナーウクレレをもち、「介護!」と呼ばれると登壇するお嬢さんのシンガーソングライターこむろゆいさんと一緒に歌を歌われていました。


小室:萩尾さんは3.11の後、何も手がつかなかったそうですが、それから仕事をする気になったきっかけについてお話されていましたが。

萩尾:津波で海岸線がなくなっていく様子を見ていて、すごいショックだったのですが、同時に福島の原発が事故を起こしてしまい、水がない電源がないと聞いたときに、これはもうメルトダウンするのではないか、いつそれを発表するのだろうと思ったのに、テレビではずっと「今のところ心配はありません」とずっと言い続けていて、自分の不安な気持ちとマスコミの情報の前にどんどん落差が出てきてしまった。心配のもっていき場がなくて、本当に何も手がつかない状態になってしまった。

そうしたら、友達がお花見に誘ってくれて、ちょっと経済を回しましょうということで、そこで地震と原発事故の話になったら、一人そういったことに詳しい人がいて、チェルノブイリでは汚染された壌土を回復させるのに植物の種を蒔いて、その植物に放射性物質を吸収させていると聞いて、(今回の事故で)飛散してしまった放射性物質はどうすることも出来ないのだろうなと思っていたら、そんな方法があったのかというので、インターネットで調べました。
するとチェルノブイリでの実践だけでなく、福島でもすでにその取り組みが始まっていることを知り感動した。もうダメだと思ったところに、ちょっと希望がわいてきて、その「希望」の話を描きたいなと思った。事故直後だったので、今発表しても良いのだろうかと思い、小学館の編集さんに「こういう題材で描きたいのですがいいですか?」と聞いたら、わりと簡単に「いいですよ」と言っていただいた。そして準備しているところにしりあがり寿さんが「あの日からのマンガ」を(連載し)初めて、それも3.11以後の世界を描いたもので、他にも描いてくれてる方がいると勇気づけられて、描きましょうという気になった。

小室:もし、チェルノブイリで植物に吸収させている情報を手に入らなかったら、どうなっていましたか?

萩尾:手に入っていなかったら、まだずっと悶々としていた。

小室:それほどの手につかない、あるいは私はもう描けない、描きたくないという状況になったことが過去にありましたか?

萩尾:私はだいたい4年に1度くらいスランプになって、どこかに逃げ出したくなってしまうのですが、そのときはわりと気楽な感じで、どこかに行ってしまうので、気持ちとしては解放された感じですね。

小室:もう描かなくていいんだ、みたいな感じですか?

萩尾:いえ、また戻るだろうなと思うのだけれど、とりあえず今はちょっとおいといて、という感じだった。それがそのときは生活全般において楽しいことが考えられない。楽しい映画を観に行くとか演劇を観に行くとか、旅行に行こうとか、クリエイティブな方向に行こうという発想が全然浮かばなくて、毎日新聞を見ながら「まだ大丈夫だと言ってるが、本当にどうなるんだろう?」とずっと頭がぐるぐる回ってしまっていた。今でも思うが、本当に信じられないことが起こってしまった。原子力発電所の事故なんて私はSFの世界でしか本で読んだことがなかった。もちろんスリーマイル島でもあったし、チェルノブイリでもあったけど、あれはアメリカだから、あれはソ連だからと思い、スリーマイルの方はわりとすぐに収まったし、(自分は事故に対して)距離をおいていた。それにこんな型の原子炉は日本にはないと聞いていたし、自分も原子力の安全神話というものを信じていて、(事故は)起こらないだろうと。信じていたけれど、確証は全然ない。根拠なく信じていたんです。

その事故(3.11の原発事故)が起こったとき、原子力発電所ってどれだけ壊れるんだろうと思い、インターネットで調べて行ったら、過去に世界中の原子力発電所で起こった事故の列がだーっと出てきて、本当に知らなかったけど、メルトダウンすれすれのところまで、いろいろなところで事故が起こっていた。絶対安全だと言っていたけれど、こんなに事故が起こっていたのかと、本当に根拠のない神話を私自身根拠なく信じていたんですね。なんて馬鹿だったのかなと。

こんなSFの世界でしか読んだことがないことが、日本の(自分のいる場所から)すぐそばにある福島で起こってしまって、どうすればいいのか?これは火星人襲来に匹敵するくらいの惨劇ではないかと。頭の中で混乱してしまい、本当にどちらかに向けて立ち直りたいけれど、どちらに向かって行けばいいのか、全然わからないという状態で、プチ鬱なんて言葉がありますけれど、非常に鬱々としていましたね。

小室:そういうときに自分がどちら側にいるのか立ち位置がわからないことと、自分の命が惜しいのか、世界が壊れることが怖いのか、ということが判断つかなかった。どんな感じでしたか?

萩尾:私が産まれる前に第二次世界大戦があり、広島長崎に原子力爆弾が落ちた。小学校の修学旅行で長崎に行き、二度とこういうことが起こってはいけない、みんな戦争のない平和な世界を望んだ。日本の社会はその方向へ進んで行くのだろうと思っていた。冷戦時代にソ連とアメリカが核開発の競争をしたけれど、一方では宇宙船アポロが月に行ったりして、明るい未来に行く方向もあった。だからソ連邦も崩壊したし、局地戦もあるし、アフリカは飢餓でたいへんだけれども、やっぱり世界はある部分ではゆるぎなく、ちゃんと続いていくだろうと思っていた。ところが、あまりにも3.11の衝撃が大きくて、そのゆるぎなく続いていくだろうなと思っていた気持ち自体が非常に揺れ動いてしまって、世界がどうなるか本当にわからない状態になってしまったのです。震災の被災(の映像)が次々入って来ると、町ごとなくなっている、村ごとなくなっている、空港が水没している。原発の避難区域がパタパタと広がって行き、30km圏内になったけれど、アメリカは80km圏内だと言っている。美術品やエンターテイメントが来ない。成田空港の発着が禁止された。児童絵本の展示会に行く友達は成田からは行くなと言われて関西空港から飛んだ。こういったことを見たり聞いたりしていると、この事故・汚染はいつ収まるのかなと思って放射能の半減期などを調べると、私自身が生きているうちは収まらない。

小室:そういう時期にレディ・ガガのパワーはすごい。しかも日本に来るし。何か励まされますよね。自国にいる僕等は何をやっているのだとカツを入れられた気がした。

萩尾:音楽の力はすごい。一人のスターがやってきて、みんな頑張りましょうといって、励まされた。

ここで小室等さんの歌。
・雨のベラルーシ
・明日も公園へ行こう


(ごめんなさい。ここからはしょります...。)

ここで小室等さんが「なのはな」の本を出す。萩尾先生自ら解説を始めます。

「ブルート夫人」
プルート夫人はプルトニウムの化身。マドンナ、レティガガのような絶世の美女。
キューリー夫人から始まる放射性物質の歴史を紐解くと、マンハッタン計画など人類は新しい科学に魅せられている。
放射性物質に惹かれるのは人間の性(さが)のようなものではないか。


「雨の夜―ウラノス伯爵」
ウラノス伯爵はウランの化身でイケメン。
すばらしい未来を約束してくれる存在。お金や豊かな生活を望む人と、安全な大地と水や食べ物を望む人が同じ席で言い争う中、ウラノス伯爵が死んでしまうと、安全を主張し、ウラノス伯爵に反対していた女性が「愛しているから死なないで」と言ってすがりつく。これは何故か。自分にもわからない(笑)。作者が言わせたのではなく、キャラクターが勝手に言い出したこと。自分でも何故かわからないまま描いている。

「サロメ20XX」
オスカー・ワイルドのサロメを下敷きにしている。
王女は7つのベールのおどりをほめられて王様に褒美をもらう。その褒美はヨカナンの首。ヨカナンはどうしてあんなに美しいサロメをそこまで嫌うのかがきらいなのか?と思って描いた。ここではサロメにヨカナンにとらえられて地下牢に閉じこめられてしまう。サロメは放射性廃棄物だから10万年も閉じこめられる。こんなにみんなのために尽くしてきたのに、閉じこめるなんてひどい!と叫ぶサロメを哀れに思うようになった。


小室さんに「萩尾さんは原子力発言について結局どう思う?」と聞かれ、「急には無理だけれど、なくしていく方向に行った方が良いと思う」と答えられました。その後に...

これら三部作では原子力に反対するけれど、実は好きなのではないか?という人間の性質について考えてみた。

人間の脳の前頭葉には「仮定の未来を考える」ことと、「リスクを甘くみる」の両方の面があって、それで相殺されてしまう。なので、たとえ電気料金は高くなっても、リスクが少しでも減った方がいいのではないかと思う。

人間の幸福は経済発展だけなのか、経済がまだ発展するという幻想をもっているのではないだろうか?ブータンのように幸福度の追求しても良いのではないか。

今、学校で教えていることは大量生産時代のもの。だが、経済発展が頭打ちになっていることを生徒たちも知っていて、その閉塞感からいじめなどに走っているのではないか?と感じた。


小室さんの歌がまた入ります。
「原子爆弾の歌」「ゲンシバクダンの歌」(六文銭&小室等。中津川フォークジャンボリー)
別役実の詩で、1970年代はじめにレコード制作基準倫理委員会により発売禁止になった歌。紀伊國屋書店、西武デパート、忠犬ハチ公がふっとんだという歌詞を含んでいる。何故発売禁止になったのかと方々聞いてまわったら、みだりに公共物を破壊してはいけないとのこと(これを聞いて萩尾先生が替歌を作られていました。でも内容を忘れてしまった...。)

小室:手塚治虫の「鉄腕アトム」は原子力燃料で動く。鉄腕アトムが原子力の推進に貢献したことは間違いない。
萩尾:原子力は永遠のエネルギーであると信じていた時代のフィンタジーである。アトム一家が福島を除線しに行くお行く話を考えた。描いてないが。

ここで小室等さんの唄。
「鉄腕アトム」のアニメ版で使われる曲は1970年に谷川俊太郎が詩を描いた。これを谷川の息子である谷川賢作編曲によるバージョンで歌ってみます。
その谷川俊太郎が最近「103歳になったアトム」という詩を書いたので、これも。


小室:3.11以後何が変わったか。

萩尾:元々SFファンタジーが好きで、未来シミュレーションタイプのSFが好きだった。このベースとなる足元が崩れてしまったので、すべてを再構築している感じ。

小室:3.11以後、表現者としての窮屈さはないですか?

萩尾:漫画の「漫」という字は"何でものみこむ"という意味があり、窮屈さは感じない。


質問コーナー
Q:「王妃マルゴ」をどうして描かれたのか

萩尾:スカパーでコスチュームものがあると衣装を楽しんで見ていた。その中にグリフィスの「イントレランス」があり、バーテルミーの虐殺はマルゴーとアンリ4世の結婚の4日後で、どうしてそんなことが起こったのか興味があると『YOU』の編集者に言ったら、資料をどっさりもらってしまった。それが3~4年前。
歴史物は初で慣れてないせいか、早速間違いを出してしまった。コンデ公の奥さんはエレオノーレというのに、まちがえてシャーロットと描いてしまった。単行本になるときに直します。こういうミスは山のようにしてるので、人のミスにも寛容です。

小室:とりかえしのつかない間違いはありますか?

萩尾:表現は人を傷つけてる可能性があるが、それがここまでは傷つくだろうとわかっているときは、描いてしまう。しかし、自分がわかってないで傷つけてるとしたらと考えると困る。

Q:「残酷な神が支配する」はどうして描かれたのか。

A:家族とうまく意思疎通できない時期があり、それは何故だろうと考えて心理学の本を読むようになった。最終的には占いの本に行き着き、単に「相性が悪い」ということがわかった。

それらの本を読んでいるうちに、児童虐待の話を読むようになり、虐待者である父親の言葉、被虐待者である娘の言葉はあるものの、母親の言葉が載っているものがなく、探したら一つだけ見つかった。母親は常に楽観的で、夫は反省しているし、なかったことにしようと言う。結局離婚してしまうが、母に反発して娘は「あなたは目が見えていない」と言う。それでも何も考えていないかのような母親だったが、父親が再婚すると、大きなショックを受ける。すでに離婚もしているのに、何故か、それだけ依存していたのだということを、母親自身が初めて知ったと告白している。その母親のことも描きたくて、「残酷な神が支配する」を始めた。
最初は虐待する父親をさっさと死なせて、母親や被虐待者である子供のことを描こうと思っていたが、どんどん父親を描くのが楽しくなってしまい、なかなか死ななかった。

Q:絵の勉強はどこでしたのか?
A:デザインの専門学校に行き、2年間デッサン、クロッキーを習った。最初は、手塚治虫の絵や西谷祥子を真似て描いていた。矢代まさ子そっくりと言われたこともある。

Q:エドガーとアランの話の続きは?オスカーはもう出てこないのか?(この質問、こういうトークショーだとほぼ必ずと言って良いほど出ますが、先生うんざりせずにお答えなさりました。ファンのみなさん、同じお答えだと思うので、もうやめませんか?)
A:エドガーとアランの続きを描くにはもう歳をとりすぎました。オスカーのいとこ、はとこくらいなら描けるかもしれない。


会場へ行ってチラシを見て初めて知ったのですが、当日終演後にサイン会がありました。会場入口では本が4冊(なのはな、文藝別冊、対談集2冊)販売されていて、1冊につき1回サインをして下さるとのこと。

20120811.jpg私は「なのはな」は3冊目ですが、購入して列に並びました。実を言うと、目の前でサインしていただくのは初めて。一緒のお写真は恥ずかしくて撮れませんでしたが、握手していただき、感激しました。他の方のサインをしているところを撮影し、その場でサイト掲載の許可をいただけたので、アップします。

撮影の腕が悪いのでわかりにくいですが、緑色の素敵なお召し物で、石のアクセサリーをなさっていました。先生は年齢を経るごとにお美しくなっていかれているようです。後光がさしていました。


【みなさんのレポート】

萩尾望都先生語る at カタログハウスのセミナー(ウチノリカさん)※mixiアカウントお持ちの方限定

カタログハウスのセミナー 小室等さん×萩尾望都さん 2012年8月11日(土)14時~ 新宿(prenomさん)

小室等×萩尾望都「反原発(?)セミナー」に参加して その1その2(nobu2kunさん)

2012.08.14 17:29 | イベント

「王妃マルゴ」の連載が開始

王妃マルゴ第1回2012年8月11日発売の『YOU』9月号から「王妃マルゴ」の連載が開始されました。16世紀フランスに実在した王妃マルゴを描く歴史絵巻で、萩尾先生は史実に基づいた歴史物は西洋のものは初ではないかと思います。コスチューム・プレイとしてはひょっとして1985年の「ばらの花びん」以来ではないでしょうか?

デュマの「王妃マルゴ」が原作ではありません。萩尾先生のオリジナルです。

この連載にあたって、グリフィスの「イントレランス」を見て聖バルテルミの大虐殺は何故起こったのかという話を『YOU』の編集者に話したら、ドサっと資料が送られれてきたことがきっかけで描くことになった。それが3~4年前。読み切りを考えていたけれど、とても無理で連載になった、とカタログハウスのセミナーでおっしゃっていました。

マルゴはユグノー(プロテスタント)とカトリックの対立が激化していた時代の王妃で、多情と呼ばれたくさんの愛人がいた美女だったそうです。そんな彼女が激動の時代を生き抜く姿を、萩尾先生がこれからどう描いていくのでしょうか。

第1回は巻頭カラー。これを読んで一発で話がわかった方は16世紀フランス史をご存知の方のみでしょう。歴史に名を残した人だけで10数名登場します。毎回書き足して行きますが、とりあえず登場人物と第1回のあらすじを下記に描きました。
「王妃マルゴ」

43ページと44ページの「シャルロット」は「エレオノール」のミスだそうです。単行本で修正されるそうです。

萩尾望都、16世紀フランスの歴史絵巻「王妃マルゴ」始動(ナタリー)

2012.08.14 14:32 | 雑誌掲載情報

日本SF作家クラブ50周年記念プラネタリウム番組のキャラクターデザイン

SFWJ 502012年8月1日、日本SF作家クラブ50周年記念プロジェクト「SFWJ50」の中の一つとして、プラネタリウム番組の制作が行われ、その番組のキャラクターデザインを萩尾先生がつとめられるとの発表がありました。

(PDF)SFWJ50通信 2012年8月1日号 (900K)

タイトルは「未来はボクらがつくるんだ!22世紀のものがたり」というもので、鹿児島市立科学館の企画として製作、2013年4月に公開され以後順次全国のプラネタリウムで上映されるとのこと。

制作にあたっては以下の皆様の力を終結するそうです。豪華なラインナップです。(当然のことながら萩尾先生は日本SF作家クラブの会員です)。

・ストーリー原案:新井素子ほか
・キャラクター原案:萩尾望都
・メカニカルデザイン:加藤直之
・SF考証:鹿野司
・制作:五藤光学研究所

内容は「22世紀の世界で子どもたちが小さな冒険をする物語」だそうで、仮想の未来の世界をアニメで表現するのでしょうね。

プラネタリウム番組をご覧になったことがない方のために簡単に説明しますと、プラネタリウムのドーム型の天井~壁に上映する映像作品で、ものすごく迫力があります。これで1時間半とか2時間とか見ていたら、気持ち悪くなるでしょうから、通常20分~30分程度。15分くらいのものもあります。私が見たのは「ドラえもん 宇宙ふしぎ大探検」と「ダイナソーDX」です。おもしろかった!3D映画より迫力があります。

来年の春が待ち遠しいです。

【2012年8月30日追記】
こちらにキャラクターデザインの画像が2枚あがってます。
SF作家クラブ50周年で記念プラネタリウム番組(BOOKS asahi.com)

【2013年2月1日追記】
プラネタリウム番組が出来上がったようです。
プラネタリウム番組『未来はボクらがつくるんだ! 22世紀のものがたり』鹿児島市立科学館にて4月1日より公開(sf50)

【2013年6月17日追記】
上映スケジュールが発表されました。詳細な上映時間は直接お問い合わせ下さい。

2013年4月1日(月)~6月30日(日):鹿児島市立科学館

2013年8月21日(水)~9月1日(日) (26日~27日休館)
品川区立五反田文化センタープラネタリウム
お問い合わせ(五反田文化センター):03-3492-2451

2013年9月7日(土)~10月26日(土)毎週土曜日19:00~:仙台市天文台

2012.08.08 0:45 | イベント